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政治学(方法論)系ジャーナルの「キャラ」紹介 ── 方法論クラスタの雑談を盗み聞きしてみた

·6 分
Hiromu Sugiyama
著者
Hiromu Sugiyama
コンジョイント実験、官僚制のアカウンタビリティ、投票制度を研究する早稲田大学の研究者。
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記念すべき「Lv.1 研究者の備忘録」第一回のテーマは、政治学系の学術誌です。

政治学系のジャーナルってとにかく数が多くて、ググれば創刊年とか系譜くらいはすぐ出てきます。でも「じゃあ実際、このジャーナルってどんな雰囲気なの?」というのは、意外と検索しても出てこない……なんてことありませんか?(特に他分野から来た身としては、これが結構つらい)

そこで今回は、この分野に長くいる方々が雑談していた「各ジャーナルの印象」を、こっそりメモっていたものをシェアしてみようと思います。学会の廊下で交わされる、ああいう「あるある」トークのやつです。

APSR(American Political Science Review)
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公式サイト / Twitter

1906年から、アメリカ政治学会(APSA: American Political Science Association)が発行している、政治学における最も権威ある査読付き学術誌。雰囲気で言うと押井守版の『攻殻機動隊』的というか、「個とは何か」「国家とは何か」を、あの密度と重厚さで問い詰めてくる感じ。(そういえば、原作遵守の新シリーズ始まりましたね〜嬉しいです)

ただし格式ある分、扱っているテーマは政治学の中でもかなり大きなお題目。たとえば「カントの政治哲学とは何ぞや」的な、思想史・哲学寄りのテーマや、制度そのものを問い直すような研究にaudienceや編集者の目が向きがちです。大きなテーマに真正面から挑みたい人にはうってつけかもしれません。

AJPS(American Journal of Political Science)
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公式サイト / Twitter

1956年創刊、中西部政治学会(MPSA: Midwest Political Science Association)の機関誌。米国政治、比較政治学、国際関係、政治理論、政治学方法論と扱う範囲はとにかく広く、政治学の世界的トップジャーナルの一角です。

因果推論・方法論・データまわりで強みのある論文なら、投稿を勧められることが多いみたいです。位置づけとしてはだいぶ「Scienceよりの学術誌」。イメージとしては『機動警察パトレイバー』寄り――派手さより「現場(データ)に足のついた仕事を、特車二課ばりに手堅くこなしてくる」タイプの一冊。

PA(Political Analysis)
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公式サイト / Twitter

政治学の方法論そのものを扱うジャーナルなので、正直「研究者じゃないとあまり興味を持てない」かもしれません。でも研究者を目指しているなら、一度は読んでおきたい一冊です。

研究者とそうでない人の違いは、結局のところ「方法論への理解の深さ」に集約されると言っても過言ではなく、PAは定量・定性どちらの方法論の発展にも大きく貢献してきました。AJPSに比べると権威は一段落ちるものの、知名度は抜群。「政治学の課題にAJPSほど切り込んでいないけれど、政治学で初めて使われる方法論が強み」という論文にはぴったりの居場所です。実際、他の論文と同じ結論に、まったく違うアプローチで辿り着いたような論文も多く載っています。『らき☆すた』の小ネタが分かる人にしか刺さらないのと同じで、PAも「方法論オタク」にしか本当の面白さが伝わらない、そういう一冊です。

BJPS(British Journal of Political Science)
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公式サイト / Twitter

政治学のあらゆる分野を扱うジャーナルですが、これまで挙げた中では、ヨーロッパ政治、特にイギリスに関する研究がやや多め。とはいえヨーロッパ以外の地域の政治も扱っています。個人的には比較政治学、特に民主主義や政党政治まわりの良い論文が多い印象なので、その領域を選んだ人はチェックしておくといいと思います。Twitterアカウントでも情報発信中。

イメージとしては「AJPSのyounger sibling」――『まんがタイムきらら』本誌と『きらら Carat』『きらら MAX』の関係に近いかもしれません。同じ一族で実力も確かなのに、まだ本家ほどの貫禄はついてきていない、そんな立ち位置。

JOP(The Journal of Politics)
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公式サイト / Twitter

政治学の世界的トップ3ジャーナルの一つと言われる『The Journal of Politics』の略称。1939年創刊で、南部政治学会(SPSA: Southern Political Science Association)の機関誌としてシカゴ大学出版局から季刊で発行されています。AJPSには一歩譲るものの、実証研究のジャーナルとしては申し分ない一冊。

ちなみに数年前、日本政治研究で知られるAmy Catalinac教授がAssociate Editor(AE)に就任しました。AEというのは、編集長(Editor-in-Chief)を補佐して査読プロセスの管理や採否評価を担うポジションのこと。『涼宮ハルヒの憂鬱』のSOS団じゃないですけど、「事情の分かる人」が内輪に一人入るだけで居心地が一気に変わる感覚、なんとなく伝わるでしょうか。これで日本政治の研究を投稿するとき「なぜ日本の研究なのか」と聞かれずに済むかも……という、ちょっとした希望的観測もあったり(?)。

QJPS(Quarterly Journal of Political Science)
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公式サイト(Twitterアカウントは下記の通り未運用)

政治経済学に重点を置いたジャーナル。政治と経済の関係、企業の政治的関与、選挙運動、投票行動あたりのテーマが繰り返し登場します。ここまで挙げた中では一番の新参で、創刊は2006年。

それでもSJRの評価は短期間でかなり高く、研究の水準・方法論の洗練度は折り紙つき。『けいおん!』が「軽音楽部」という地味な題材から始まって、あっという間に一時代を築いたのと近い勢いを感じます――創刊からまだ日が浅いのに、もう錚々たる顔ぶれと肩を並べている新興勢力。ただしTwitterアカウントはまだ運用されていない模様。位置づけとしてはJOPと同レベルの実証研究誌、といったところ。

その他、分野別に
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なども存在します。『まんがタイムきらら』系列にジャンルごとの専門誌があるのと同じで、政治学にも分野特化のジャーナルがちゃんと棲み分けされているわけです。

まとめ
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これから論文を読むときは、著者やその人が属する学派・グループだけでなく、「どの学会が出しているジャーナルに載っているか」を意識してみると、論文という畑の中の細かい分類が見えやすくなってくるかもしれません。

次回のLv.1備忘録もお楽しみに!

参考
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lv1-kenkyuusha-note - この記事は連載の一部です
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